金継ぎの技法について、よく聞かれる事などを中心に、少しずつ書こうと思います。
「バラバラでパーツの多い割れの場合は、どうやって直すのですか?」とのご質問。
どうしてもズレちゃうんですが…とか、麦漆で器がべとべとに汚れちゃう…とか、接着してテープで止めまくっても崩壊しちゃう…なども、多い質問です。
きちんと下処理をする(後日説明します)。きちんと麦漆を作る。ということを前提に、私が今ベストだと思うやり方をお話しします。(あくまでもモノ継ぎのやり方です。金継ぎ師の数だけやり方があると思ってますので)
パーツの多い割れや、パーツが少なくても複雑な割れの場合、私は一気には接着しません。
大抵2~3ブロック程度に分けて接着するのですが、ここで大切なことは、
ブロック分けして接着するときも、漆を固める時は必ず一つにまとめる。ということ。
そして、マスキングテープはあくまでも補助的に使うにとどめ、重力に逆らい落下する箇所を無理矢理テープで固定するということはしません。
注ぎ口が複雑な割れ方をしているこのティーポット。
一見、すでに接着されているように見えますが、実は…
本体にはまだ接着していません。
本体との接地面には麦漆を塗らず、でも、しっかりと一つにまとめて硬化させました。
接着した時は、翌日も、その翌日も、必ずズレがないかを確かめ、その都度少しずつ力を加えて押さえ、しっかりと確実に接着できるように目と手をかけてやります。
本体とくっつける前に、中にはみ出した麦漆もきれいにしておきます。
そして、一週間程度経過したら、本体としっかりと接着します。
この真緑な物体は、私の直しの必需品。(石膏をとくのに使うゴムボウルですが…)
好きな角度で器をキープできる優れものです。
ここからまた数日間、ズレが無くしっかりと接着できるように、毎日チェックします。
そして、もう大丈夫だなと思ったら、ここから一ヶ月程度かけて硬化乾燥させます。
なぜ一気に接着せず、こんなまどろっこしいことをするのかと言えば、はじめに書いた質問の内容がほぼほぼクリアできるからです。
私だって、最初はズレまくっていたし汚していたし、接着した箇所が弱くて数日後に取れちゃったり。さんざん失敗をしてようやく辿り着いたのがこのやり方。ということです。
なので、皆さんからいただくご質問は、まったくもって全て思い当たるし、へたしたら今も悩みの種である事案だし、これからも常により良いやり方を勉強し続けなければ…と、痛感しています。
下の器の直す手順は、次回のブログで説明しようと思います。
ブロック分けのコツも先送りします。
あまり長くなるのもアレなので…。